2015年6月1日月曜日

ジェネリック医薬品とてんかん

先日、このようなニュースを目にしました。新聞等でも紹介されていましたので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんね。

経済財政諮問会議、後発品の数量シェア、20年度に80%以上―塩崎厚労相が新目標示す
http://www.qlifepro.com/news/20150529/the-quantity-of-generic-products-share-more-than-80-in-20-years-shiozaki-re-disposition-indicate-new-targets.html

国民医療費が高齢化社会にも伴って増大しているなか、社会保障費の伸びを抑える努力が必要なことは異論はないと思います。問題は中身ですね。このニュースに関していえば、医療現場で治療を行っている、特にてんかん患者さんを治療している立場からいえば、後発品=ジェネリック医薬品のシェア目標に数値をもうけるというのはかなり問題があると思います。

まず、後発品は価格を安く提供するために、オリジナルの薬に比べて安定供給の確保などにお金をかけていません。現にこのように注文が増えると供給自体が止まってしまい、薬を出せない状態になることもあります。

ex.「バルプロ酸ナトリウムSR錠200㎎「アメル」の品薄に伴う出荷調整のお詫び」
(共和薬品)
http://www.jga.gr.jp/pdf/supply/0048.pdf

後発品はオリジナルの薬に比べて、生物学的利用率(わかりやすく言えば、飲んだ薬がどのぐらい血液の中に取り込まれるか)に一定の差がある=血液中の薬物濃度に違いがあることが許されています。価格を安くするためにはある程度の効果の差まではOKとするということです。

もっともこの効果の差は少ない方にぶれることもあれば、多い方にぶれることもあるので、必ずしも効果が低いわけではありません。薬によっては問題がないこともあると思います。というよりも多くの薬では問題がないかもしれません。そうした薬では、このような品薄が起こったとしても、改めて他の後発品やオリジナル薬品を処方することも問題はないでしょう。

しかし、抗てんかん薬に関しては、事情が全く異なります。抗てんかん薬でたとえば血中濃度が2割減ったり、2割増したりすることは、かなりの確率で効果の違いにつながります。抗てんかん薬はもともと採血で血液中の薬物濃度を測定しながら治療をする、またその血中濃度の値に一定の目安となる濃度が設定されているという特徴があります。抗てんかん薬を服用されている方ならよくご存じかと思います。

実際に、血中濃度が低く保たれていたような方では、2割濃度が下がれば、発作が起こる可能性はとてもに高くなってしまいますし、高めに保たれていた方では2割濃度が増せば副作用がみられやすくなります。。ですので抗てんかん薬に関してはオリジナル薬品から後発品、あるいは後発品からオリジナル、あるいは別の後発品、といった切り替えは、海外の多くの国で推奨されない、あるいはしてはいけない、と色々な資料に書かれています。
ex.ジェネリック医薬品に関する各学会の提言
http://square.umin.ac.jp/jes/pdf/generic.pdf#search='%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%8D%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E5%8C%BB%E8%96%AC%E5%93%81+%E3%81%A6%E3%82%93%E3%81%8B%E3%82%93'

後発薬品への誘導、というのはある意味では(他の外国でもかなりの割合の薬がそうなっていることも考えると)仕方がないかもしれないとは思います。しかし、薬によっては問題がある、ということはきちんと認識され、その認識にのっとった社会保障政策であってほしいと願っています。これからもこの点はきちんと訴えていきたいと思います。

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