2016年11月18日金曜日

てんかん外来(新患)の現状:2015年7月~2016年6月

最近の発表のなかで、当院の新患外来のデータを少しまとめてご紹介する機会がありましたので、こちらにも掲載させていただきます。
以前にも同様のまとめ(2014年4月~2015年9月)をしたことがありますので、興味をお持ちの方はそちらもご参照ください。
http://koidenaikashinkeika.blogspot.jp/2015/09/blog-post_14.html

2016年7月~2016年6月の一年間に当院てんかん外来を新たに受診された患者さんは186名(男性110名、女性76名)でした。年齢層は20代の方が60名と最も多く、次いで10代、30代となっていましたが、5歳~79歳と幅広い年齢の方が受診されていました。

居住地はより大阪の方が以前より増え、大阪市内(91名)、市外大阪府(75名)が9割弱を占めました。大阪府外では兵庫(10名)、奈良(7名)、京都(2名)、大分(1名)の順になっていました。

診断は137名がてんかん(症候性部分てんかん(あるいはその疑い、以下同)102名、特発性全般てんかん19名、特発性部分てんかん4名、症候性全般てんかん4名、未決定てんかん1名、進行性ミオクローヌスてんかん1名、分類不能のてんかん6名)であり、てんかんの疑い8名を含めると145名(78%)がてんかんに関連する方と考えられました。

一方で、残りの41名(22%)はてんかんの治療や診断を希望されてこられた方が大半ですが、失神(あるいはその疑い、以下同)13名、心因性非てんかん発作11名、(癲癇とは診断しえない)初発のけいれんエピソード3名、発作性運動誘発性ジスキネジア2名となっていました。当初からてんかんか非てんかんかの鑑別を希望されてこられた方もいますが、やはりてんかんとしてすでに治療が行われていたような方も含まれています。色々なところでお話をしていますが、現時点でてんかんの診断に一番役立つのは(十分な知識を持った医師が行う)問診です。脳波検査にはてんかんがあっても異常がないことはよくありますし、MRIなどはてんかんそのものの診断には基本的には寄与しません。症状がてんかん発作で間違いなければ、検査に異常がなくてもてんかんだと自信を持ってきちんと診断ができる、というのが一番重要なことなのです。当院でてんかんではなかった、と診断した方の少なくない割合の方々は、この問診が圧倒的に不足していると考えられました。不十分な問診に、不十分な脳波の判読経験が加わると、誤った診断が下されることはよくあることなのですね。

もちろん私も診断を誤ったことはたくさんあります。「てんかんではない」と診断した方がてんかん発作を持っていたり、てんかんだと思っていた方の発作がずっと見ている間に「あれ?」と思うことが出てきたりといった経験は沢山あります。逆に言えばそういう経験をたくさんしてきたので、診断を保留すべき場合は保留し、患者さんと相談して経過をみながら判断をする、といった方法を選択できるようにもなりました。

これが単に「てんかんかもしれない」「てんかんが否定できない」というだけであれば患者さんは不安の中で日々を過ごすことになりますが、診断を確実に下すメリットや、不確実な診断のデメリットについてきちんと説明し、経過の観察の方法や起こりうる症状への対処法などをきちんと説明しておくことが重要です。それによって患者さんやご家族は診断を下すためのチームに入っていただけます。こうした経験を一緒にすることで、その後てんかんと診断した場合も患者さんやご家族が主体的に治療に取り組むことができるようになっている気がします。

現在は平日午後に問診を1時間程度できる枠を設け、その後脳波をとらせて頂き、検査後に治療方針などを説明する時間を30分ぐらいとっています(土曜日は混雑しており、問診に時間がかけられないため新患枠を作っておりません。申し訳ありません)最初が肝心なので、この診療枠設定はしばらくは変更する予定はありません。再診の方には混雑でご迷惑をおかけすることもありますが、初診の方に時間をとるためもあり、何卒ご理解をよろしくお願い申し上げます。



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